毒ママを選んで生まれてきたらこうなった

生まれる前と胎内記憶のある毒母第3世代なつみ

水難事故での不思議な話


私が小学生の頃
よく叔父(母の次弟)は「穴場を見つけた」と言っては、私と兄を辺鄙な海に連れて行ってくれました。
遊泳禁止あるいは普通の人なら経験的に立ち入らないところばかりでした。
そんな危険なレジャーでとうとう起きた水難事故。

叔父は潮干狩りに夢中でした。
ゴミだらけの薄汚い浅瀬(すねくらいの所)でバシャバシャやってたのですが、突然兄が足を取られて水中に吸い込まれてしまいました。

兄が突然消えた!
状況が飲み込めなかった私は、兄の方へ向かいました。
兄が、海面から顔を出した途端に「来るな!流される!」と叫びました。

そこで、ものすごい潮の流れと、事の成り行きに気づいた私。
県下最長2級河川の河口だったので潮の流れが激しく、水底を深く削り込んでいました。
見た目は浅瀬が広がり、水面は波もなく穏やかに見えますが、水面下では猛烈に速い岩をも砕く力の潮が流れていたのです。
引き返そうと片足を上げた途端バランスを崩して、まるで足を掴まれたかのように水の中へ引きずりこまれました。
息をしようにも水中に引き込む力が凄すぎて、もがいてももがいても水面に出られませんでした。

溺れるというのは、泳げないから、ではないんですね。
ものすごい強い力で濁流に飲み込まれたまま体の自由が奪われ、為すすべなし。
海中では、様々な硬いモノが体にガンガンぶつかってきました。
自分自身も岩や底にガンガンぶつかりながら流されました。
目を反射的に閉じたら、恐怖のあまり幻聴か・・・
頭の中で響くのです。
「目を閉じるな。開けておけ」
痛くて怖いのですが、目を開けたまま濁流の中で耐えました。

海中で岩にぶつかった途端、再び強い流れが体を底まで持っていき、海底に叩きつけられました。
その時、咄嗟に足や手で頭やお腹をガードしました。
「ぶつかる!」と防御できたのは、目を開けて見ていたからです。
防御がなければ、打ちどころが悪くて気を失っていたかもしれません。

「息を吐くな」
こんな言葉も響きました。
深い海の中に投げ出された私は、引き摺り込まれてからずっと息を吸っていませんでした。
苦しくて苦しくて早く海面へ出たいと必死なのですが、全方位見渡す限り群青色。
一体どちらが上なのかもわかりません。

「光の方へ」
また響きました。
息を吐いていなかったおかげ
で、まだ肺に空気があったのでしょう。
体の力を抜くと、ゆっくりゆっくり浮かんでいきました。
群青の世界に微かな白い点が徐々に広がり、陽の光が!
映画か!な展開で、身体も光に向かって浮いていました。

海面を確信し、渾身の力を振り絞り水面へ顔を出すと「その岩に掴まれ!」と兄の声が耳に。
兄は運良く海岸に流れついたようでした。
かなり体力を消耗していた私は、岩に届いたものの手を滑らせて、またもや更に沖へ流されました。(海藻のせいですべるんだよ)
絶望的な悲鳴をあげながら、浮いているゴミや草を必死で掴みました。

溺れる者は藁をも掴む
奇跡みたいな話なのですが、そこに運良く大きな流木が。(汚い海でよかった)
「それをつかめ!」
兄の声と共にガシッとしっかり掴みました。
ゴツゴツした流木の棘が刺さろうが、腕が血まみれになろうが、絶対に離すまいと抱きしめました。
その流木を浮き輪がわりに安全そうな海岸まで泳ぎ、兄と陸路を歩き歩きしながら、叔父を探し、叔父のもとへ。
辺鄙なところなので誰にも助けてもらえませんでした。
もう、体は全身打撲と擦り傷でぼろぼろ。
痛いし、涙でぐちゃぐちゃな顔のまま、震えながら帰還しました。
海水もたくさん飲んだので、吐きながら。

ところで
あの幻聴は何だったのだろう。
溺れる者は藁をもつかむ
A drowning man will catch at a straw.
このことわざが一助になった人が私以外にも世界中にいそうです。
教訓:遊泳禁止、先人の知恵には従おう。
この後の展開はこちら

dokuhahadai3sedai.hateblo.jp